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EIGRPのメトリックを計算する

※ 前の「シナリオ」の続きとして記載しています。
ネットワーク構成図

  1. RT-A のルーティングテーブル (EIGRP) を表示させなさい。
  2. < RT-A >
    RT-A# sh ip route eigrp | begin Gateway
    Gateway of last resort is not set
    
    D        172.16.3.0/24 [90/40514560] via 172.16.2.2, 00:00:34, Serial0/0/0 ← RT-B から学習した 172.16.3.0/24 宛てのルート
    RT-A#
    
    ■ メトリック
    [90/40514560] はアドミニストレーティブディスタンスの値と、メトリックの値です。


    RIP の場合、RIPv1、RIPv2 ともに、メトリックはホップ数 (通過するルータの数) でした。
    EIGRP では、帯域幅、遅延、負荷、信頼性の4つの要素から計算される値をメトリックとして使用します。これを複合メトリックと言います。ただし、デフォルトで帯域幅と遅延の2つのみを使用しますので、ここでもこの2つのみを使用した説明にします。

    帯域幅と遅延はインターフェイスの種類によって決まっています。
    インターフェイス帯域幅遅延
    EthernetBW 10000 KbitDLY 1000 usec
    FastEthernetBW 100000 KbitDLY 100 usec
    GigabitEthernetBW 1000000 KbitDLY 10 usec
    SerialBW 1544 KbitDLY 20000 usec
    この値は show interfaces コマンドの出力結果の中にありますので、それで確認できます。

    帯域幅は bandwidth コマンドで変更可能で、遅延も delay コマンドで変更可能です。
    ただし、このシナリオでは delay コマンドによる変更は行いません。

    EIGRP のメトリックは以下の計算式で求められます。
    EIGRP のメトリック = (帯域幅+遅延)×256
    そしてこの帯域幅と遅延は以下の計算式で求めます。
    帯域幅 = 10^7/(自ルータから宛先ネットワークまでのルートの中の最小の帯域幅)
    遅延 = (自ルータから宛先ネットワークまでの遅延の合計)/10
    では、実際に図を見ながら計算してみましょう。
    RT-A から 172.16.3.0/24 のネットワークに行くためのルートエントリのメトリックを計算します。



    帯域幅、遅延ともに、出力インターフェイスの情報を基に計算します。
    RT-A から 172.16.3.0/24 のネットワークに行くためには、RT-A の s0/0/0 から出力し、RT-B の s0/0/0 に入力され、RT-B の F0/0 から出力します。

  3. RT-A の s0/0/0 の帯域幅と遅延を調べなさい。
  4. < RT-A >
    RT-A# sh int s0/0/0 | include BW
      MTU 1500 bytes, BW 64 Kbit/sec, DLY 20000 usec,
    RT-A#
    
  5. RT-B の F0/0 の帯域幅と遅延を調べなさい。
  6. < RT-B >
    RT-B# sh int f0/0 | include BW
      MTU 1500 bytes, BW 100000 Kbit/sec, DLY 100 usec,
    RT-B#
      
    「BW 100000 Kbit」よりも「BW 64 Kbit」の方が小さいので、最少帯域幅は「BW 64 Kbit」になります。
    ※ ここでいう帯域幅は、bandwidth コマンドで設定した値 (もしくはデフォルト値) です。
    遅延は「DLY 20000 usec」と「DLY 100 usec」の合計です。
    帯域幅 = 10^7/64 = 156250
    遅延 = (20000+100)/10 = 2010
    したがって、このルートのメトリックは
    EIGRP のメトリック = (156250+2010)×256 = 40514560
    となり、RT-A での sh ip route のメトリックと一致します。
    D       172.16.3.0 [90/40514560] via 172.16.2.2, 00:00:08, Serial0/0
    

    では、クロックレートはそのままで、RT-A の s0/0/0 の帯域幅だけ 256Kbps に変更してみましょう。


  7. RT-A の s0/0/0 の 帯域幅 を 256Kbps に変更し、sh int s0/0/0 で確認しなさい。
  8. < RT-A >
    RT-A# conf t
    Enter configuration commands, one per line.  End with CNTL/Z.
    RT-A(config)# int s0/0
    RT-A(config-if)# bandwidth 256
    RT-A(config-if)# ^Z
    RT-A# sh int s0/0/0 | include BW
      MTU 1500 bytes, BW 256 Kbit/sec, DLY 20000 usec,
    RT-A#
    
    では、計算してみましょう。
    RT-B の F0/0 は変更していませんので、帯域幅「BW 100000 Kbit」、遅延「DLY 100 usec」のままです。

    「BW 100000 Kbit」よりも「BW 256 Kbit」の方が小さいので、最少帯域幅は「BW 256 Kbit」になります。
    遅延は「DLY 20000 usec」と「DLY 100 usec」の合計です。
    帯域幅 = 10^7/256 = 39062 ← 小数点以下切捨て
    遅延 = (20000+100)/10 = 2010
    したがって、このルートのメトリックは
    EIGRP のメトリック = (39062+2010)×256 = 10514432
    となります。では、RT-A のルーティングテーブルを表示させ確認しましょう。

  9. RT-A のルーティングテーブル (EIGRP) を表示させなさい。
  10. < RT-A >
    RT-A# sh ip route eigrp | begin Gateway
    Gateway of last resort is not set
    
          172.16.0.0/16 is variably subnetted, 5 subnets, 2 masks
    D        172.16.3.0/24 [90/10514432] via 172.16.2.2, 00:08:40, Serial0/0/0
    RT-A#
    
    計算通り、10514432 になっています。
  11. RT-B のルーティングテーブル (EIGRP) を表示させなさい。
  12. < RT-B >
    RT-B# sh ip route eigrp | begin Gateway
    Gateway of last resort is not set
    
          172.16.0.0/16 is variably subnetted, 5 subnets, 2 masks
    D        172.16.1.0/24 [90/40514560] via 172.16.2.1, 00:37:08, Serial0/0/0
    RT-B#
    
    しかし、RT-B の EIGRP のメトリックは 40514560 のままです。
    どうしてでしょうか?
    思い出してみましょう。
    「帯域幅、遅延ともに、出力インターフェイスの情報を基に計算します」でしたね。


  13. RT-B で sh int s0/0/0 の帯域幅を調べなさい。
  14. < RT-B >
    RT-B# sh int s0/0/0 | include BW
      MTU 1500 bytes, BW 64 Kbit/sec, DLY 20000 usec,
    RT-B#
    
    RT-A の s0/0/0 の帯域幅は変更しましたが、RT-B の帯域幅は変更しませんでした。
    そのため、「BW 256 Kbit」ではなく「BW 64 Kbit」でメトリックが計算されているのです。
    ※ 次の「シナリオ」に続きます。