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EIGRPのサクセサとフィージブルサクセサを確認する <2>

※ 前の「シナリオ」の続きとして記載しています。
次に A ルートの帯域幅を 384Kbps から 256Kbps へ変更して、次のネットワークとなるようにします。
一目瞭然ですが、一番速いルート (帯域幅の広いルート) は B ルートです。したがって、ネットワーク 172.16.0.0/16 への最適ルート (サクセサ) は B ルートになります。A ルートがフィージブルサクセサになるかどうかは A ルートの AD 値で決まります。



では計算してみましょう。
まず、B ルートは計算済みですので、前に計算したものを転記します。



B ルートでの最少帯域幅も「BW 384 Kbit」です。
遅延は「DLY 20000 usec」と「DLY 20000 usec」と「DLY 100 usec」の合計です。
帯域幅 = 10^7/384 = 26041
遅延 = (20000+20000+100)/10 = 4010
したがって、B ルートのメトリック (FD) は
メトリック = (26041+4010)×256 = 7693056
となります。
次に A ルートを計算します。



A ルートでの最少帯域幅は「BW 256 Kbit」です。
遅延は両方の遅延「DLY 20000 usec」と「DLY 100 usec」の合計です。
帯域幅 = 10^7/256 = 39062
遅延 = (20000+100)/10 = 2010
したがって、A ルートのメトリック (FD) は
メトリック = (39062+2010)×256 = 10514432
となり、B ルートよりも大きな値です。
では次に A ルートの AD を求めます。
A ルートの AD は、RT-A にとってのネイバーである RT-C から宛先ネットワーク 172.16.0.0/16 までのメトリックです。



最少帯域幅は「BW 100000 Kbit」です。
遅延は「DLY 100 usec」です。
帯域幅 = 10^7/100000 = 100
遅延 = 100/10 = 10
したがって、A ルートの AD は
AD = (100+10)×256 = 28160
となります。
B ルートの FD (=7693056) > A ルートの AD (=28160)
この条件は満たされますので、A ルートはフィージブルサクセサになります。

では、実際に確認しましょう。
    EIGRP のメトリックの計算は帯域幅で決まり、クロックレートの設定は影響を与えませんので、今回はクロックレートの変更は行わず帯域幅の変更のみ行います。

  1. RT-A の S0/0/1 の帯域幅を 256Kbps に設定をしなさい。
  2. < RT-A >
    RT-A# conf t
    Enter configuration commands, one per line.  End with CNTL/Z.
    RT-A(config-if)# int s0/0/1
    RT-A(config-if)# bandwidth 256
    RT-A(config-if)# ^Z
    RT-A#
    
  3. RT-C の S0/0/1 の帯域幅を 256Kbps に設定をしなさい。
  4. < RT-C >
    RT-C(# conf t
    Enter configuration commands, one per line.  End with CNTL/Z.
    RT-C(config-if)# int s0/0/1
    RT-C(config-if)# bandwidth 256
    RT-C(config-if)# ^Z
    RT-C#
    
  5. RT-A のルーティングテーブルを表示させなさい。
  6. < RT-A >
    RT-A# sh ip route eigrp | begin Gateway
    Gateway of last resort is not set
    
    D     172.16.0.0/16 [90/7693056] via 192.168.1.2, 00:00:20, Serial0/0/0  ← B ルート
    D     192.168.2.0/24 [90/7690496] via 192.168.1.2, 00:00:20, Serial0/0/0
    RT-A#
    
    RT-A から 172.16.0.0/16 のネットワークに行くための最適ルート (サクセサ) が、A ルートから B ルートに変わりました。
  7. RT-A のトポロジーテーブルを表示させなさい。
  8. < RT-A >
    RT-A# sh ip eigrp topology
    EIGRP-IPv4 Topology Table for AS(10)/ID(192.168.3.1)
    Codes: P - Passive, A - Active, U - Update, Q - Query, R - Reply,
           r - reply Status, s - sia Status
    
    P 192.168.3.0/24, 1 successors, FD is 10511872
            via Connected, Serial0/0/1
    P 192.168.2.0/24, 1 successors, FD is 7690496
            via 192.168.1.2 (7690496/5511936), Serial0/0/0
            via 192.168.3.3 (11023872/5511936), Serial0/0/1
    P 172.16.0.0/16, 1 successors, FD is 7181056
            via 192.168.1.2 (7693056/5514496), Serial0/0/0  ← サクセサ (B ルート)
            via 192.168.3.3 (10514432/28160), Serial0/0/1   ← フィージブルサクセサ (A ルート)
    P 192.168.1.0/24, 1 successors, FD is 7178496
            via Connected, Serial0/0/0
    
    RT-A#
    
    B ルートがサクセサで、A ルートがフィージブルサクセサです。FD、AD ともに計算値と一致しています。

    次に A ルートの帯域幅を 256Kbps から 384Kbps に戻します。
    これで再度 A ルートがサクセサになります。

  9. RT-A の S0/0/1 の帯域幅を 384Kbps に戻しなさい。
  10. < RT-A >
    RT-A# conf t
    Enter configuration commands, one per line.  End with CNTL/Z.
    RT-A(config-if)# int s0/0/1
    RT-A(config-if)# bandwidth 384
    RT-A(config-if)# ^Z
    RT-A#
    
  11. RT-C の S0/0/1 の帯域幅を 384Kbps に戻しなさい。
  12. < RT-C >
    RT-C(# conf t
    Enter configuration commands, one per line.  End with CNTL/Z.
    RT-C(config-if)# int s0/0/1
    RT-C(config-if)# bandwidth 384
    RT-C(config-if)# ^Z
    RT-C#
    
  13. RT-A のルーティングテーブルを表示させなさい。
  14. < RT-A >
    RT-A# sh ip route eigrp | begin Gateway
    Gateway of last resort is not set
    
    D     172.16.0.0/16 [90/7181056] via 192.168.3.3, 00:00:41, Serial0/0/1  ← A ルート
    D     192.168.2.0/24 [90/7690496] via 192.168.3.3, 00:00:41, Serial0/0/1
                         [90/7690496] via 192.168.1.2, 00:00:41, Serial0/0/0
    RT-A#
    
  15. RT-A のトポロジーテーブルを表示させなさい。
  16. < RT-A >
    RT-A# sh ip eigrp topology
    EIGRP-IPv4 Topology Table for AS(10)/ID(192.168.3.1)
    Codes: P - Passive, A - Active, U - Update, Q - Query, R - Reply,
           r - reply Status, s - sia Status
    
    P 192.168.3.0/24, 1 successors, FD is 7178496
            via Connected, Serial0/0/1
    P 192.168.2.0/24, 2 successors, FD is 7690496
            via 192.168.1.2 (7690496/5511936), Serial0/0/0
            via 192.168.3.3 (7690496/5511936), Serial0/0/1
    P 172.16.0.0/16, 1 successors, FD is 7181056
            via 192.168.3.3 (7181056/28160), Serial0/0/1    ← サクセサ (A ルート)
            via 192.168.1.2 (7693056/5514496), Serial0/0/0  ← フィージブルサクセサ (B ルート)
    P 192.168.1.0/24, 1 successors, FD is 7178496
            via Connected, Serial0/0/0
    
    RT-A#
    
    ※ 次の「シナリオ」に続きます。