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EIGRPのサクセサとフィージブルサクセサを確認する <3>

※ 前の「シナリオ」の続きとして記載しています。
次に B ルートの RT-B-RT-C 間の帯域幅を 512Kbps から 384Kbps へ変更して、次のネットワークとなるようにします。
A ルートを通っても B ルートを通っても帯域幅は 384Kbps で同じですが、384bps の回線を1つ通るのと、384Kbps の回線を2つ通るのでは、384Kbps の回線を1つ通る方が速いに決まっていますね。EIGRP のメトリックの計算でも、最少帯域幅が同じでも、遅延は通過する回線の累積で計算されますので、通過する回線が多くなればメトリックも大きくなります。

したがって、A ルートが最適ルート(サクセサ)に選ばれます。
B ルートがフィージブルサクセサになるかどうかは B ルートの AD 値で決まります。



では計算してみましょう。
まず、Aルートは計算済みですので、前に計算したものを転記します。



A ルートでの最少帯域幅は「BW 384 Kbit」です。
遅延は両方の遅延「DLY 20000 usec」と「DLY 100 usec」の合計です。
帯域幅 = 10^7/384 = 26041
遅延 = (20000+100)/10 = 2010
したがって、A ルートのメトリック (FD) は
メトリック = (26041+2010)×256 = 7181056
となります。
次に B ルートを計算します。



B ルートでの最少帯域幅は「BW 384 Kbit」です。
遅延は「DLY 20000 usec」と「DLY 20000 usec」と「DLY 100 usec」の合計です。
帯域幅 = 10^7/384 = 26041
遅延 = (20000+20000+100)/10 = 4010
したがって、B ルートのメトリック (FD) は
メトリック = (26041+4010)×256 = 7693056
となり、A ルートよりも大きな値です。
では次に B ルートの AD を求めます。
B ルートの AD は、RT-A にとってのネイバーである RT-B から宛先ネットワーク 172.16.0.0/16 までのメトリックです。



最少帯域幅は「BW 384 Kbit」です。
遅延は両方の遅延「DLY 20000 usec」と「DLY 100 usec」の合計です。
帯域幅 = 10^7/384 = 26041 遅延 = (20000+100)/10 = 2010
したがって、B ルートの AD は
AAD =(26041+2010)×256 = 7181056
となります。
A ルートの FD (=7181056) > B ルートの AD (=7181056)
この条件が満たされませんでした。
そのため、Bルートはフィージブルサクセサになりません。

では、実際に確認しましょう。
  1. RT-B の S0/0/1 の帯域幅を 384Kbps に設定をしなさい。
  2. < RT-B >
    RT-B# conf t
    Enter configuration commands, one per line.  End with CNTL/Z.
    RT-B(config-if)# int s0/0/1
    RT-B(config-if)# bandwidth 384
    RT-B(config-if)# ^Z
    RT-B#
    
  3. RT-C の S0/0/0 の帯域幅を 384Kbps に設定をしなさい。
  4. < RT-C >
    RT-C(# conf t
    Enter configuration commands, one per line.  End with CNTL/Z.
    RT-C(config-if)# int s0/0/0
    RT-C(config-if)# bandwidth 384
    RT-C(config-if)# ^Z
    RT-C#
    
  5. RT-A のルーティングテーブル (EIGRP) を表示させなさい。
  6. < RT-A >
    RT-A# sh ip route eigrp | begin Gateway
    Gateway of last resort is not set
    
    D     172.16.0.0/16 [90/7181056] via 192.168.3.3, 00:10:46, Serial0/0/1 ← A ルート
    D     192.168.2.0/24 [90/7690496] via 192.168.3.3, 00:10:46, Serial0/0/1
                         [90/7690496] via 192.168.1.2, 00:10:46, Serial0/0/0
    RT-A#
    
    最適ルート(サクセサ)は A ルートのままです。
  7. RT-A のトポロジーテーブルを表示させなさい。
  8. < RT-A >
    RT-A# sh ip eigrp topology
    EIGRP-IPv4 Topology Table for AS(10)/ID(192.168.3.1)
    Codes: P - Passive, A - Active, U - Update, Q - Query, R - Reply,
           r - reply Status, s - sia Status
    
    P 192.168.3.0/24, 1 successors, FD is 7178496
            via Connected, Serial0/0/1
    P 192.168.2.0/24, 2 successors, FD is 7690496
            via 192.168.1.2 (7690496/7178496), Serial0/0/0
            via 192.168.3.3 (7690496/7178496), Serial0/0/1
    P 172.16.0.0/16, 1 successors, FD is 7181056
            via 192.168.3.3 (7181056/28160), Serial0/0/1  ← サクセサ (A ルート)
    P 192.168.1.0/24, 1 successors, FD is 7178496
            via Connected, Serial0/0/0
    
    RT-A#
    
    サクセサでもフィージブルサクセサでもないルートまで表示するには、show ip eigrp topology all-links コマンドを使います。
    RT-A# sh ip eigrp topology all-links
    EIGRP-IPv4 Topology Table for AS(10)/ID(192.168.3.1)
    Codes: P - Passive, A - Active, U - Update, Q - Query, R - Reply,
           r - reply Status, s - sia Status
    
    P 192.168.3.0/24, 1 successors, FD is 7178496, serno 10
            via Connected, Serial0/0/1
    P 192.168.2.0/24, 2 successors, FD is 7690496, serno 11
            via 192.168.1.2 (7690496/7178496), Serial0/0/0
            via 192.168.3.3 (7690496/7178496), Serial0/0/1
    P 172.16.0.0/16, 1 successors, FD is 7181056, serno 12
            via 192.168.3.3 (7181056/28160), Serial0/0/1
            via 192.168.1.2 (7693056/7181056), Serial0/0/0
    P 192.168.1.0/24, 1 successors, FD is 7178496, serno 1
            via Connected, Serial0/0/0
    
    RT-A#
    

    ではここで、サクセサである A ルートをダウンさせてみます。


  9. RT-C の S0/0/1 を shutdown させなさい。
  10. < RT-C >
    RT-C(# conf t
    Enter configuration commands, one per line.  End with CNTL/Z.
    RT-C(config-if)# int s0/0/1
    RT-C(config-if)# shut
    RT-C(config-if)# ^Z
    RT-C#
    
  11. RT-A のルーティングテーブル (EIGRP) を表示させなさい。
  12. < RT-A >
    RT-A# sh ip route eigrp | begin Gateway
    Gateway of last resort is not set
    
    D     172.16.0.0/16 [90/7693056] via 192.168.1.2, 00:00:20, Serial0/0/0  ← B ルート
    D     192.168.2.0/24 [90/7690496] via 192.168.1.2, 00:00:20, Serial0/0/0
    RT-A#
    
    サクセサがダウンし、フィージブルサクセサがない場合は、隣接ルータにクエリを送信してサクセサを探します。
    このため、フィージブルサクセサがある場合に比べて若干復旧は遅くなりますが、宛先ネットワークへのルートさえあれば通信可能な状態になります。
  13. RT-A のトポロジーテーブルを表示させなさい。
  14. < RT-A >
    RT-A# sh ip eigrp topology
    EIGRP-IPv4 Topology Table for AS(10)/ID(192.168.3.1)
    Codes: P - Passive, A - Active, U - Update, Q - Query, R - Reply,
           r - reply Status, s - sia Status
    
    P 192.168.2.0/24, 1 successors, FD is 7690496
            via 192.168.1.2 (7690496/7178496), Serial0/0/0
    P 172.16.0.0/16, 1 successors, FD is 7693056
            via 192.168.1.2 (7693056/7181056), Serial0/0/0  ← サクセサ (B ルート)
    P 192.168.1.0/24, 1 successors, FD is 7178496
            via Connected, Serial0/0/0
    
    RT-A#